母親に性的指向をカミングアウトした
きっかけは、MtFの友達と脱毛に行こうという話をしていたことだった。
サイトを巡回して、よくある質問を見ていたら、男性はお断りしていますとのことで、私はとても悲しくなった。
心も体つきも女の子なのに、そんなことで規制されてしまうのかと。
悲しくなって、母親にLINEをしてみた。
「めちゃくちゃ唐突なんだけどさ」
「なに?」
「私が実は恋愛対象が男の子だけじゃないって言ったら驚く?」
「そりゃ、驚きますよ。入籍したばっかりだし」
「そっかあ。別に旦那のことが嫌いとかじゃなくて普通に好きなんだけど、私は女の子も恋愛対象に入るしいわゆるLGBTみたいな人も恋愛対象に入るんだよね」
「入籍して無くても驚くけど、話はきちんと聞きたくなるよね」
「やさしい。お父さんに言ったら気持ち悪がられそうと思って」
「もうね、私達の頃の常識や当たり前が当たり前じゃなくなってるから」
「うん」
「お父さんは受け入れられないかもね。前にお兄ちゃんがもしかしたら…って話をしたら嫌がられた」
「私はそれが怖かったからずっと黙ってたんだけど、今MtFっていう戸籍は男なんだけど心は女の子の友達がいてね、その子と脱毛行きたいねって話してたら、戸籍上男性は駄目ですって書いてあって」
「普通に結婚して子供を産んでもらわないと、日本が無くなる、とか言うしね。私は日本が無くなるとか、どうでもいい」
「わたしもw てか男女で結婚しても必ずしも子供を産むわけじゃないし」
「メンズエステで脱毛するしかないってこと?」
「いや。検索したら一応受け入れてくれるところはあった。ただ、心は女の子なのにそういうの受け入れてもらえないのはつらいなって思って話したくなっただけ」
「今は少しずつ良くなってきてるから、もう少しの辛抱かも…。トイレ問題とかはよく聞くわ」
「多目的トイレとかもっと増えるといいよね」
「私は解決する手立てを知らないけど、大変なのは知ってる。親となるともしかしたらうちの子も…?と一度は考えるんじゃないかな? どうあれ、子供には幸せになってほしいと思ってるよ。お父さんもね」
「もう数年前の話なんだけど、MtXっていう性別が定まってない人と少しの間付き合ってたこともあるんだよね」
「色々な人がいるから、付き合うなとかない。むしろ、知っておいた方が良いと思う。世界は広いし」
「お母さんがそういう意見の人でよかった」
「趣味嗜好は色々だし、その人のことはそれだけでは測れないから」
「あなたたちが死ぬまで幸せに生きていける選択をして、頑張っていけばそれで良いです」
「うん、話聞いてくれてありがとう」
すっきりした。とても、すっきりした。
私はパンセクシュアルだ。それを友達には話しても、家族に話したのは初めてだった。
だから、否定されなくて本当によかった。
世の中には不幸なカミングアウトもあるらしい。しかし、私の世界は案外恵まれているようだった。